関節痛の症状が出ているときは、辛いものですね。何に対しても痛みの症状というのは、日常生活をする上で大変で心身ともに参ってしまうことがあります。
病院で処方された薬に頼って、関節痛の症状を少しでも緩和させていくこともいいのですが、自然な漢方の力を借りて痛みの緩和を図るという手もあります。ここでは、関節痛と漢方に関する情報をまとめてみました。
関節痛の主な原因と症状
一言で関節痛といっても、考えられる病気は1つだけではありません。変形性関節症、関節リウマチ、肩関節周囲炎、痛風などの病気が挙げられます。それぞれどのような症状が出るのでしょうか?
変形性関節症
膝の痛みを訴える人の大半は変形性膝関節症にかかっています。この病気にかかりやすいのは、50代以降の女性。関節の軟骨のすり減りが原因となっていることが多いですが、ケガやその他の病気が原因となって出てくることもあります。
ひどい炎症になってしまうと関節水腫といって水が溜まってきます。また、膝にだるさを感じるようになるのが特徴です。
関節リウマチ
30~50代、その中でも40代での女性に多く発症するという病気が関節リウマチです。男性と女子の発症率を比較した場合、女性はなんと男性の4倍も発症率があります。
日本では70万~100万人の人が関節リウマチに悩まされているというデータがあり、今ではそれは増加傾向にあります。免疫異常で起こる疾患だといわれているものの、関節リウマチの根本にある原因はまだはっきりしていません。
リウマチにかかったときの初期で出やすい症状というと、朝起きたときに感じる両手のこわばりです。微熱や疲労感もともなうことがあります。
肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)
四十肩や五十肩と言ったほうが馴染みのある人もいるでしょう。肩関節周囲炎を引き起こさないようにするなら、普段から同じ姿勢をせず、適度にストレッチをしたり、肩回しをするなどして柔軟性を持たせるようにしましょう。無理を感じない程度にするといいでしょう。
痛風
男性に多く発症する痛風は、突然激しい痛みに襲われる病気です。「痛風」読んで字のごとく、風が吹くだけでも痛みを感じる病気です。一度痛風になった場合には、尿酸値が高めである可能性があるので病院で受診することをおすめします。
痛風にかかると10日間ほどで腫れや痛みはひきます。でも尿酸値の高い状態のまま放置しておくと、また痛風の独特な発作に襲われます。そして症状がひどくなってくれば、今度はコブのようなものが出来てきます。
さらには腎不全などの他の疾病との合併症も引き起こされるようになりますから、放っておくのは厳禁です。
関節痛の解消に漢方が効く理由
漢方は歴とした薬です。薬があなたに合うものであれば、その効果を実感できるでしょう。1つの症状のみに有効的に効く、病院から処方される普通の西洋の薬とは違い、漢方は心と体(症状)を1つのものと考えて処方される薬です。
そもそも漢方とはいったいどのような薬なのでしょうか?
漢方薬は自然の「生薬」の組み合わせ
漢方がどうしてわたしたちの体に効果的なのか、そのキーとなるのは「生薬」にありました。植物や動物、鉱物などの天然のものからできたもののことを生薬といいます。
中国にある薬物研究所からの報告によると、生薬は全部で394種類もあり、その中でも薬草類は278種を占めています。厳密に決められている生薬の配合割合によって、複数の生薬が調合され、出来上がったものが漢方薬なのです。
一つの漢方薬に様々な効果がある
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)という漢方を例にあげてみましょう。当帰芍薬散は一つの漢方薬ですが、停滞気味の血のめぐりをよくする働きもあれば、血を造り出す働きもあります。
そんなわけですから、当帰芍薬散を飲むことで、生理痛、肌荒れ、血色不良、目の下のくま、動悸、眠りが浅く沢山夢を見る、頭痛、かすみ目などの症状改善に効果が期待できます。
それぞれの漢方にはそれぞれ独自の強みがあります。その強みに関係のある症状であれば、比較的どんな症状にもタイアップできるというのが漢方なんです。ただし、体質によって合うもの合わないものもあるので選ぶときには注意しましょう。
同じ痛みでも体質によって合う漢方が違う
漢方を選ぶときのポイントですが、同じ症状であっても、たとえば色白で痩せ気味の虚弱体質の人と、汗っかきで体力が中程度の人とでは使う漢方が違ってきます。
漢方を扱っている専門機関では、一人ひとりの体格、体質、ストレスを感じやすいのか、自律神経が乱れがちなのか、生活習慣についてなど、漢方を処方する際に事前に充分なカウンセリングがあります。
そのカウンセリングを元にして、一人ひとりに合わせた処方をしてくれるのが特徴です。漢方専門機関では、料金はかかるものの、量の加減や生薬の組み合わせもオーダーメイドでおこなってくれるので、あなたに合う漢方薬を買うことができ、その効果も期待できますよ。
それに対して、市販に売られている漢方薬は安いものの、だれにでも合うような決まりきった処方で売られているのが特徴です。様々な症状を治したいからといって、いろんなものを飲むと飲み合わせによっては、効きすぎてしまったり逆に効かなかったり…。
副作用が出てくることがありますので、医師や薬剤師さんと相談したほうがいいでしょう。忘れないでほしいことは、漢方薬はサプリメントではなく「薬」だということです。
体全体の気や血の巡りを整える事で痛みを解消する
漢方の世界で、心身の健康状態をキープするのに重要なものといえば、「気」「血(けつ)」「水(すい)」の3つです。この3つのバランスのうち一つでもバランスを崩すしてしまうと心身ともに影響が出てきてしまいます。
そんなときに漢方薬を使うと不調が改善されることがあるんですね。
症状や体質別!関節痛におすすめの漢方
関節痛に効果のある漢方には何があるのかを考えたとき、答えは1つではありません。1つの症状にいくつもの候補を挙げられるのが、漢方薬の世界です。一言で関節痛に効きめがある漢方といってもたくさんあるんですよ。
冷えのある人には桂枝加朮附湯(ケイシカジュツブトウ)…<ツムラ18>
桂枝加朮附湯(ケイシカジュツブトウ)は、体の中の気を外へ押し出して、気の巡りを循環させる働きと、体の中に熱を作って体を温めることにより痛みの緩和をはかるという働きがあります。
そのような働きから、体に冷えを感じる人は血のめぐりがよくないですから、血液循環をよくし体の中から温めてあげることで関節痛の痛みを和らげていくことができます。
炎症で熱を持っている人には越婢加朮湯(エッピカジュツトウ)…<ツムラ28>
越婢加朮湯(エッピカジュツトウ)は、体力が中程度以上の人向きで、炎症による熱や腫れの症状を改善します。その他、むくみやのどがよく渇く、尿量が減少している等の症状にも効果が期待できる漢方薬です。
むくみや膝に水が溜まる人には防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)…<ツムラ20>
防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)は、疲労を感じやすく汗かきの肥満気味の方の関節痛に効果が期待できる漢方です。肥満傾向にあると体はむくみやすく、膝に水が溜まってしまう場合があります。
防已黄耆湯は、むくみの解消を図ってくれるので継続して飲んでいけば、体にあったむくみが次第に解消されて体重も落ちてくるでしょう。
腰から下に痛みがある人には疎経活血湯(ソケイカッケツトウ)…<ツムラ53>
水分や血のめぐりを改善して痛みを解消する疎経活血湯(ソケイカッケツトウ)は、体力が中程度、肌の色は浅黒い人向けの漢方薬です。
むくみの症状が時々出て、それによって足腰の痛みを感じやすい人に適しています。夜になると腰から下にかけて痛みが出てくるという人には、特におすすめの漢方薬です。
慢性的な関節痛におすすめの漢方
慢性的な関節痛に悩まされている人の特徴に、何らかの原因で血のめぐりが悪くなっていることがあげられます。血のめぐりが悪く、体が冷えている状態を改善し、血液循環をよくすることで関節痛を解消してくれるおすすめの2種類の漢方薬があります。
大防風湯(ダイボウフウトウ)と薏苡仁湯(ヨクイニントウ)、それぞれどのような漢方なのでしょうか?
体をあたため痛みを発散!大防風湯(ダイボウフウトウ)…<ツムラ97>
大防風湯(ダイボウフウトウ)という漢方は、飲み続けていくと、次第に体の冷えが解消され体の中から温かくなってくるのを感じます。血のめぐりが改善されることで、今まで冷えが原因で痛みが出ていた関節痛が緩和されてきます。
大防風湯は、特に、病気のために体力の低下が見られ、体の血のめぐりが悪くなってしまっている人にはより効果が見られます。
水分をのぞいて熱を発散!薏苡仁湯(ヨクイニントウ)…<ツムラ52>
関節痛で腫れている症状や熱を持っている場合には、薏苡仁湯(ヨクイニントウ)という漢方が効果を発揮します。漢方の世界では、体に水が溜まり、それが元で体全体が冷えて痛みが出ていると考えます。
薏苡仁湯には、溜まっている水分を取り除き、体の中から熱を発散させる作用があります。
風邪による関節痛には?麻黄湯(マオウトウ)…<ツムラ27>
麻黄湯(マオウトウ)は、風邪の引きはじめによる発熱や節々の痛みがあるときに飲むと効果のある漢方薬です。体の弱っている人や虚弱体質の方には向いていません。風邪の引きはじめであってもまだ体力の残っている人向けの漢方です。
麻黄湯を飲むと、どどっと発汗し、排尿の量も増えます。数回飲んだだけで熱が下がってしまうこともある漢方薬なので、体の弱っている人が飲んでしまうと、もっと弱らせてしまう恐れがあります。飲むときには体力の有無の確認もしたほうがいいでしょう。
実は肩こりに効く!葛根湯(カッコントウ)…<ツムラ1>
風邪にの引きはじめによく効くと言われている葛根湯。その効果は、引きはじめの風邪だけなく、肩こりや眠気、腹痛やのぼせなどの症状にも見られます。痛みを感じてすぐ、風邪ひいたかなと思ったときにすぐ飲むと効果を発揮します。
ただ、胃腸の調子が悪い場合には、葛根湯の服用を控えるようにしましょう。
産後の関節痛は冷えとむくみをとる漢方がおすすめ!
体力がなかなか回復せず、産後は女性ホルモンのバランスが崩れることも関係し、血のめぐりが悪くなってしまいがち。そのため、冷えとむくみから関節痛に悩まされていママさんも多いですね。産後の関節痛改善の近道は、冷えとむくみの解消です。
ここでは3種類の漢方をご紹介します。
栄養と血を補う当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)…<ツムラ23>
当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)は、体力が弱っている人向けの漢方です。関節痛の他に、冷え性、貧血気味、肩こりや足腰の冷えによるむくみなどの症状が出ている場合にも効果が見られます。
当帰芍薬散を飲んでいけば、血のめぐりが改善されて冷えの解消、代謝もよくなってくるので、冷えによる不調が解消され次第に元気を取り戻してきます。
血のめぐりと冷えに効く帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)
血のめぐりの悪い場合に効果てきめんなのが、帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)。継続して飲むことで、今まで停滞していた血液の循環がよくなってきます。
そうなれば自然と冷えも解消されるので、冷えからきていた関節痛も徐々に改善されてきます。
元気を補う補中益気湯(ツムラホチュウエッキトウ)…<ツムラ41>
補中益気湯(ツムラホチュウエッキトウ)は、胃腸の調子がよくない人向けの漢方です。補中益気湯は、胃腸の働きを改善し、消化器系の内臓を元気にしてくれるので少しずつ元気になってきます。
胃腸の調子が悪く、疲労、体力低下、食欲不振などを感じているときに補中益気湯を飲んでみてください。
更年期障害に効く漢方は?加味逍遙散(カミショウヨウサン)…<ツムラ24>
血のめぐりの循環をよくする加味逍遙散(カミショウヨウサン)。体を温めてくれるだけでなく、上半身ののぼせなどの改善にも効果があります。また、更年期になると乱れる女性ホルモンのバランスを整えてくれる作用もあります。
女性独自の悩みを解決してくれる心強い味方です。ところで不定愁訴(ふていしゅうそ)という言葉を知っていますか?
原因不明のイライラや不安感、疲労感、よく眠れない、頭が重い、けだるいなどの症状があるものの、検査をしてもこれといった病気を発見できない状態のことを指します。
加味逍遥散は、そのような不定愁訴にも効果のある漢方としても知られています。虚弱体質の方で疲れやすく、イライラ感などにさいなまれてしまう人にぴったりな漢方ですよ。
ツムラの漢方薬!市販品と医療用の違い
漢方薬と言えば、漢方業界で80%以上のシェアを占める、おなじみのツムラの漢方薬ですよね。病院で処方してもらうこともできますし、薬局やネットで購入することもできます。
それぞれの購入方法で漢方薬そのものに違いがあるのでしょうか?またどちらの購入方法のほうがオトクなのでしょうか?
一番大きな違いは生薬の含有量
市販の漢方薬は、どんな人であっても副作用が出にくいように、生薬の含有量を抑え薬効を控えめにしてあります。それに対し、医療機関ではあなたの体重、体質、体長などを考えて、生薬の含有量を調整してくれます。
あなたの体と症状に合った処方なので効果も期待でき、しかも副作用もほとんど出ません。
医療用は保険がきく
漢方薬はあなたの体質や習慣、ストレス状態など心身の面で総合的に診断して、オンリーワンのものを作ることができます。ただ、専門のところで作るとなるとコスト面が高くつきます。また、意外と感じる人もいるかもしれませんが、市販薬も高めです。
漢方の購入を考えているのなら、医療機関で処方してもらうのがおすすめです。診察料や処方箋料金がかかるものの、保険がきくので安く手に入れることができるでしょう。
<豆知識>数字と色は識別しやすいため。番号で検索も可能!
あなたもご存知、ツムラの漢方薬は、数字と色がつけられています。数字と色の関係性について気になっていた人もいるのでは?
数字は、識別をしやすくすることが目的で付けられています。食べ合わせや飲み合わせ、症状などによっては、服用すると症状が悪化してしまうものも中にはあります。そのようなことから、漢方は100%安全なものとは言い切れません。
もしものことが起きた場合を想定して、番号で管理しておけば、「〇番の漢方で症状が悪くなった」等原因を突き止めることができます。また、番号がわかれば、その漢方薬についての情報を知りたいときや市販品を購入したいときなどに、検索をかけることも簡単スムーズに。
それではツムラの漢方薬についている色にはどのような理由があるのでしょうか?色をつけることで識別ができ、間違わないようにするためなんです。例えば0は空色、1は青、4は黄、8は赤(レンガ色)など、1の位の数字で色分けされているのが特徴です。
漢方を服用する時に注意する事
漢方は薬だから、普通の薬と同じように食後に飲めばいいと思っていませんか?それはNG行為です。そこには漢方ならではの理由がありました。
食間(空腹時)に服用する
漢方の服用する時間帯というと、食間(空腹時)にという指示が一般的です。食間は食後2時間後、または食前の空腹時(食事の30分前)に服用すると漢方の効果が最大限引き出されやすくなります。
漢方はさまざまな種類の生薬が配合されているもの。食後に普通の薬と同じような感覚で飲んでしまうと、他の食べ物と混ざり合って、せっかくの絶妙なバランスで配合された生薬の効果が半減してしまいます。
そのような理由から、服用するのであれば食間、または空腹時がベストなのです。
併用出来ない薬や副作用もある
漢方を飲むときには、今飲んでいる薬が合わない場合もあるので、事前に医師や薬剤師に相談してからがいいでしょう。あなた自身の判断で現在処方されている薬と一緒に飲んだら、薬の効果が出過ぎてしまうことや、逆に効果が半減してしまうことも可能性として考えれます。
体質に合わない漢方は効果がない
漢方には、虚弱体質の人、体力が中程度の人、汗っかきの人、肥満症の人向けなど、体質によって合う合わないがあります。それぞれの漢方で、そんな体質の人に向いているのかどうかを前もって確認してから、漢方を購入するようにします。
体質に合わないものを服用したところで、その効果は期待できません。
激しい痛みや高熱・生活に支障がでる時は病院へ
関節痛の痛みがひどい場合や熱がある場合、生活に支障をきたしているほどの関節痛に悩まされている場合には、まず整形外科に受診することをおすすめします。
漢方は関節痛緩和に効果が期待できます。自然の生薬を組み合わせた薬で、体質改善をしつつ体の中から徐々に変えていってくれます。ただ、漢方を選ぶときには単純にそのときに出ている症状だけに注目してチョイスしないようにします。
体質や生活習慣、ストレス度合いなどについても客観的に分析したり、薬剤師に詳しいことをたずねたりしてあなたにぴったりの漢方薬を見つけることが大切です。あなたに合った漢方薬で、悩まされている関節痛が緩和されますように。