東洋医学では虚証と実証といった疲れのタイプに分けられます。そのタイプによって選ぶ薬も変わってきます。
年齢を重ねた女性は更年期症状により自律神経のバランスを崩し疲れも取れにくくなります。加齢によって感じる症状は血流の改善や自律神経のバランスを整えてくれる漢方薬が効果的です。
漢方薬は副作用の少ない薬ですが食前・食間に服用することでさらに副作用を軽減することができます。自分の疲れのタイプはどんなものかを知り、疲れによって弱ってしまった体を改善しましょう。
東洋医学的にいう疲れやすい状態「虚証と実証」
東洋医学では疲れが出る体質を3パターンに分けています。虚弱体質の人は虚証、そして健康的な体の人は実証と言います。そしてその間の人を虚実混合証といいます。虚証と実証では服用する薬も違ってきますし、対処法も違ってきます。
そもそも虚証と実証って何?
東洋医学はまず初めに虚証と実証の意味を理解することから始まります。自分の疲れやすさはどこからきているのかを自覚することで自分に合っている解決策や漢方薬を見つけていきましょう。
虚証の症状や特徴その対策は?
すぐに疲れてしまう、いつも体が重たいという人は虚証の症状かもしれません。虚証は弱々しく線が細く、血色が悪く見えるのが特徴です。虚証タイプの人は元々体力がなく体が弱いので、体調不良を起こしやすく慢性的な症状を抱えていることもあります。
できるだけ無理はせず、弱った体をしっかりと休め体を温かく保ち丈夫な体をつくっていきましょう。
実証の症状や特徴その対策は?
いつもは元気なのに最近疲れが取れづらい、風邪をひくと悪化しやすいという人は実証の症状かもしれません。実証は健康で体力のある強い体質です。がっしりとして線が太く血色が良いのが特徴です。
実証タイプの人は食生活や生活環境のような外側からくる攻撃を受けて体調不良を起こしてしまいます。疲れを感じにくい実証タイプの人は病気の症状が悪化するまで気付かないことが多いです。
自分にとって有害なものは何かをしっかり理解し向かい合う事、そしてしっかりと休息をとる事がとても大切です。
虚実混合証の症状や特徴その対策は?
虚証と実証の中間の状態を虚実混合証といいます。虚実混合証はどちらにも偏らないバランスのとれた体ですが体調の変化でどちらかに傾いてしまうこともあります。
虚実混合証は自律神経のバランスを崩す人が多いようです。不安定な精神状態を改善するためにも、ゆったりと心を落ち着かせる時間をとることが大切です。
最近疲れやすい?疲れの原因のタイプ
疲れの原因は人によって違います。自分の疲れはどこから来ているのかを理解し、しっかり対策法を考えていきましょう。
加齢による回復力の低下
東洋医学では昔から体調を整えることで病気の回復力が上がると言われています。加齢による運動機能や基礎代謝の低下、外部ストレスにより十分な休息をとることができません。
運動機能の低下で以前よりも日々の活動にエネルギーを使い、慢性疲労を起こし回復力が低下します。低下運動機能と蓄積された疲労を、しっかり体を休めて改善していく事が回復力アップの近道です。
睡眠不足によるダメージ
私たちが体に感じる疲労は2種類あります。1つ目は激しい運動の後に感じる末梢性疲労、もう1つは脳疲労から起こる中枢性疲労です。末梢性疲労は筋肉痛といった体を動かすことでたまる乳酸が原因なので十分な休息と時間が解決してくれます。
中枢性疲労は実際に体の疲労はほとんどありません。脳疲労が続いたり過度のストレスによって体がだるいと感じたり、無気力になってしまいます。
睡眠不足が続くと脳がしっかりと休むことができなかったり、脳の血流が悪くなりします。睡眠をしっかりとることで脳疲労を予防し体の疲れを感じにくくする効果があるのです。
栄養バランスの崩れ
仕事や育児などでなかなかバランスの取れた食生活を送れないという人は意外と多いですよね。人が活動していくためのエネルギー源のほとんどが食べ物からの摂取です。
食べ物といっても食材に含まれる栄養素はそれぞれ違うので、バランスのとれた食生活を心がけていくことが大切です。栄養バランスが崩れると必要な栄養素を必要な分だけ体に送ることができません。
そして体は別の栄養素で補おうとしようと働き、疲労回復をを阻止してしまうんです。毎日少しずつでも必要な栄養素を摂取することが疲労回復や体調改善の近道になるのです。
その他の原因
ストレスが原因でおこる肝臓疲労というものがあります。一見肝臓とストレスとは関係がなさそうにも思えますね。ストレスは自律神経のバランスを崩し精神を安定させるための副交感神経が緊張したままになります。
副交感神経が緊張したままになると内臓の働きが鈍って、体内の血流量も減り、肝臓疲労を起こす原因になります。女性は貧血症状の人も多く軽度であれば気にしない人も多いです。
しかし全身を流れる血液の減少は、沢山の臓器に悪影響を与えてしまいます。鉄分やたんぱく質、ビタミンをできるだけ摂り貧血予防を心がけましょう。
”回復力の低下した更年期”による疲れやすい体におすすめの漢方
回復力の低下した更年期症状による疲労感を持っている人におすすめの漢方薬を紹介します。
加味逍遥散
加味逍遥散(カミショウヨウサン)は、自律神経のバランスを整えてくれる漢方薬です。血行促進を促しイライラや不眠症といった更年期の悩みに効果的があります。のぼせ、手足の冷え、肩こりや頭痛といった更年期特有の症状を改善してくれます。
当帰芍薬散
当帰芍薬散(トウキシャクヤク)は、更年期症状による寝つきの悪さに効く漢方薬です。回復力の低下した更年期に起こりやすい血行不良や肩こりによる頭痛にも効果があります。睡眠をしっかりとる事で疲労回復に役立ち体の不調も改善していくことができます。
桂枝茯苓丸
桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)は、自律神経が崩れてしまいやすい更年期特有の精神不安によい漢方薬と言われています。自律神経のバランスを整えて、めまいや冷え、のぼせのような更年期に起こりやすい症状を改善してくれます。
”睡眠不足”による疲れやすい体におすすめの漢方
睡眠不足が原因でなかなか疲れが取れないという人におすすめの漢方薬を紹介します。
酸棗仁湯
酸棗仁湯(サンソウニントウ)は神経質で不安症、心身ともに疲労がたまり眠れなくなっている人によい漢方薬です。睡眠によい漢方薬として知られ、睡眠の聖薬と呼ばれています。一般的に処方される睡眠薬と違い、習慣性や薬の効きすぎによる生活への支障も出ないので安心して服用できます。
帰脾湯
帰脾湯(キヒトウ)は、疲れやすく体の弱い虚証タイプの人によい漢方薬です。消化器官の働きを高める滋養強壮成分、不安や緊張をほぐす抗不安作用といった虚弱体質の人に向いています。精神不安による不眠の改善で体の調子を整えていく効果があります。
加味帰脾湯
加味帰脾湯(カミキヒトウ)は、帰脾湯(キヒトウ)に数種類の生薬をプラスした漢方薬です。精神の不安が特につらい時、イライラが募って眠れないときに効果があります。
うつ症状や自律神経症からくる食欲不振や血行不良を改善してくれるので、心身ともに疲れ果てている人によい漢方です。
”栄養バランスの崩れ”による疲れやすい体におすすめの漢方
栄養バランスの崩れから起こる疲労感を持つ人におすすめの漢方薬を紹介します。
十全大補湯
十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)は体の疲れはあるものの精神不安で眠れない人に良い漢方薬です。貧血や低血圧といった体力が低下している体を改善する効果があります。
栄養バランスが崩れてしまった体に効果があります。特に胃腸などの調子を改善することで血液の巡りを良くし、栄養状態を整えてくれます。
”肝臓の疲れ”による疲れやすい体におすすめの漢方
肝臓疲労によって起きる疲労感を持つ人におすすめの漢方薬を紹介します。
大紫故湯
大紫故湯(ダイサイコトウ)は、肝臓や胃の疾患で使用されることの多い漢方薬です。肝機能の改善や炎症を抑える作用、便秘を解消してくれる作用があり、主に実証の症状に効果的です。
腎臓の働きが悪く栄養素の配給や血液循環が行われなくなった体調不良を改善してくれる効果があります。
防風通聖散
防風通聖散(ボウツウショウサン)は、ストレスなどの食事の偏りによる肝臓疲労を改善してくれる漢方薬です。ストレスによる過食は肝機能を悪化させてしまい、便秘の原因にもなります。
肝臓は脂肪の分解をする役目があるのですが、肝臓疲労によって役目を果たすことができず脂肪の蓄積の原因になります。肝機能を正常にすることで脂肪の燃焼も促してくれ貧血を改善することで体調改善の効果もあります。
疲れやすい体を漢方で改善するときの注意点
漢方薬は生薬でできているので体に優しく副作用も少ないです。しかし沢山の症状に効果のある生薬を混ぜて作っているので、副作用が一切ないというわけではありません。
選んだ薬が自分に合わなかったり、用法用量を守らなければどんな優しい薬にも副作用は現れてしまいます。漢方薬を選ぶときにはお店に相談をして自分に合った薬を見つけましょう。日常的に服用している薬がある時には必ずお医者さんに確認をして下さいね。