食物繊維をとりすぎると良くないの?摂取量ってどのぐらい?
「便秘解消には食物繊維をとりましょう」とよく聞きますが、食物繊維を多めにとったらお腹が痛くなったり、おならが出て困ったりしたりしたことはありませんか?
食物繊維は便秘の解消や対策に効果の期待できる成分ですが、とりすぎると便秘が酷くなったり、便秘になってしまったりと逆効果になってしまうことがあります。食物繊維の摂取は1日当たりどのくらいの量が理想的なのでしょうか?
食物繊維には2種類ある
食物繊維と一言でいってもその種類は大きく2種類、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があります。水溶性食物繊維は水に溶けやすく、ヌルヌル、サラサラしているのが特徴で、水に溶けるとゲル状に変化し、食べ物や老廃物を吸着しながら胃腸内でゆっくりと移動します。
また腸内の善玉菌を増して腸内環境を整え、血糖値の急激な上昇を防ぎ、さらにコレステロール値を減少させる働きがあります。特にりんごなどの果物、昆布、里芋、寒天などの食品に水溶性食物繊維が多く含まれています。
それに対して不溶性食物繊維は、筋状でザラザラしていて、ほうれん草やキャベツなどの葉物野菜、さつまいもや穀類、豆類に多く含まれています。水分を吸収する働きがあるので胃腸内で膨らみ、便のかさ増しをすることで腸を刺激し、便通を促す作用があります。
とりすぎるとなぜ良くないの?
便秘に効果の期待される食物繊維ですが、とりすぎは返って便秘を悪化させる元となってしまいます。不溶性食物繊維と水溶性食物繊維のうち、不溶性食物繊維を多くとりすぎてしまうと腸内の水分が不足し、便のかさ増しをするどころか便が硬くなってしまいます。
不溶性食物繊維と水溶性食物繊維は、どちらか一方を多くとればいいというわけではありません。食物繊維は不溶性:水溶性=2:1での摂取が理想的だとされています。
体に良い食物繊維の摂取量は?
食物繊維を正しくとれば便秘が解消され腸内環境も整ってきます。厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年度版)」によると、食物繊維の一日当たりの目安摂取量は18歳以上男性20g以上、女性18g以上とされています。
それに対して実際の食物繊維摂取量状況はどうなのでしょうか?同じ年に出された厚生労働省「国民健康・栄養調査」では次のように報告されています。
■2015厚生労働省「国民健康・栄養調査」
- 男性20-29歳13.1g/30-39歳13.3g/40-49歳13.9g/50-59歳14.8g
- 女性20-29歳11.8g/30-39歳12.5g/40-49歳13.0g/50-59歳14.4g
このデータから男性は6~7g、女性は4~7g食物繊維が不足している状態だということがわかりますね。
食物繊維をとりすぎて便秘になる理由と対策
食物繊維の摂取は便秘解消や対策に確かな効果が期待されます。しかし食物繊維をとったのものの逆に便秘に悩まされることがあります。そこには食物繊維独自の性質が関わっていました。
便秘になる理由
食物繊維をとりすぎたために便秘が起きる理由、その原因は不溶性食物繊維を多くとったことにあります。不溶性食物繊維には胃や腸の水分を吸収して便のかさ増しをし、腸を刺激することで排便を促す作用があります。
多くとりすぎた不溶性食物繊維に胃腸内の水分を使われてしまえば、当然水分不足が発生してしまいます。水分が足りなくなれば便をかさ増しできず、腸を刺激することすらできません。そのため便が排出されず便秘になってしまうというわけなんです。
便秘にならないためには
食物繊維は便秘に効果的なのに、摂取して逆に便秘になってしまったのでは元も子ありません。便秘にならないためには、不溶性食物繊維を多く含む食品ばかりをとらないことが大切なんです。
不溶性食物繊維をとったら、その半分くらいの量の水溶性食物繊維も一緒にとってあげましょう。水溶性食物繊維は水に溶けやすくゲル状に変化し、胃腸の水分を奪わないので、水分を吸収してしまう不溶性食物繊維をしっかりとサポートする役目を果たしてくれます。
食物繊維をとりすぎて腹痛が起こる理由と対策
便秘に効果のある食物繊維をとったのに、どういうわけかお腹が痛くなってしまったことはありませんか?第6の栄養素とされている食物繊維は、人間の体にとって必要不可欠な成分ですが、とりすぎてしまうと腹痛が起きてしまいます。
なぜそのような症状が起きてしまうのでしょうか?
腹痛が起こる理由
普通食物繊維は体内に入ると、消化されずに便とともに体の外へ出されます。しかし不溶性食物繊維を多く摂取してしまうと胃腸内の水分が不足し、便や老廃物が体内に留まる時間が長くなってしまいます。
食物繊維には消化されない性質があるので、そのまま発酵し徐々に悪玉菌が増えて腸内環境は悪化、それが原因で腹痛が起きるというわけなんですね。
腹痛にならないためには
食物繊維による腹痛を避けるためには、食材を生ではなく加熱調理をして食べるようにしましょう。加熱調理をすることで食物繊維の吸収率をアップさせることができます。食物繊維は熱に強いので、加熱調理をしたとしてもその成分自体の働きが失われることはありません。
また食物繊維は繊維質が多く消化されない成分なので、胃腸に負担をかけないためにもよく噛んで食べることを心がけてくださいね。
食物繊維をとりすぎるとガスが溜まっておならが出る理由と対策
食物繊維を多く含むさつまいもを食べたときに、おならがいつも以上に出たことはありませんか?便秘に効果のある食物繊維ですが、とりすぎるとガスが溜まっておならが出ることがあります。それはどうしてなのでしょうか?
おならが出る理由
2種類ある食物繊維のうち不溶性の食物繊維を多くとりすぎてしまうと、ガスが溜まりやすくなります。不溶性食物繊維は腸内にある水分を利用して、硬くなった便のかさ増しをします。
しかし過剰に摂取してしまうと水分が不足しがちになるため、便の量を増やすことができずそのまま腸に留まることとなります。便は出ることなくとりすぎた食物繊維が発酵してしまうので、ガスが溜まりやすい状態となってしまうんですね。
おならが出ないためには
不溶性食物繊維のとりすぎでおならが出るときは、腸内環境が悪化している証拠です。おならが出ないようにするには、まず腸内環境を整えてあげましょう。それには水溶性の食物繊維や乳酸菌を多く含む食品、オリゴ糖を積極的にとるように心がけます。
水溶性食物繊維を多く含むりんごやわかめ、寒天、干しプルーン、乳酸菌を多く含むキムチやぬか漬け、ヨーグルトは中でも効果の期待できる食品とされています。
便秘の時は水溶性の食物繊維をとりすぎない程度に食べよう!
便秘を解消してくれるのは、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2種類の食物繊維です。どちらの食物繊維も便秘を解消するためには必要です。便秘になっているときの便はかたくなっているので、まずは不溶性食物繊維を適量とるようにします。
腸内で水分を含んで便のかさ増しをし、腸を刺激することで排便を促進してくれる効果が期待できます。しかし不溶性食物繊維のとりすぎは逆に便秘がひどくなるので、不溶性食物繊維をとったら、その半分の量の水溶性食物繊維もとることで腸内のバランス調整をしていきます。
水溶性の食物繊維とは
水溶性食物繊維には水に溶けやすい性質があり、ゲル状に変化して食べ物や老廃物、毒素を包み込みながらゆっくりと移動していきます。血糖値の急激な上昇を防ぎ、血中コレステロールの低下、そして脂肪吸収を抑える働きがあります。
食品の中にはその水溶性食物繊維を多く含んでいるものがあります。ここではその中から代表的な3つの食品をご紹介しましょう。
■寒天:便秘・肥満・動脈硬化・大腸がん・高血圧・骨粗しょう症・血糖値改善に効果
原料が海藻100%の寒天は、約80%が食物繊維でできています。寒天を食べることで、便秘はもちろん肥満や高血圧、大腸がんなど数多くの病気に効果が期待できます。
中でも角寒天や細寒天には、アガロペクチンという成分が含まれ、この成分がコレステロール値の低下を促してくれます。
■干しプルーン:便秘解消・血行促進・アンチエイジング効果
干しプルーンには100g当り3.4gの水溶性食物繊維が含まれています。生のプルーンの5倍の量の食物繊維と豊富な鉄分、マグネシウムやカルシウム、カリウムなどのミネラル成分も入っていて栄養価の高い食品です。
強い抗酸化作用のあるビタミンEやカロテン、アントシアニンも含まれているので、アンチエイジング効果も期待できます。
■わかめ:便秘解消・高血圧の抑制効果
アルギン酸と呼ばれる成分を含むわかめには、体の中にある余分な塩分を排出して血圧を下げる効果があります。その他に血中コレステロールの抑制、老廃物の除去や腸内細菌の排出の働きも見られます。
食物繊維のバランスが良い食べ物は?
食品の中には不溶性と水溶性の黄金比率2:1のバランスのとれた食べ物があります。ここでは2:1のバランスがとれている食べ物を6つご紹介します。全て可食部100g当りの量です。
中でも食物繊維合計量も多めの納豆とごぼうの2つは、手頃な値段で買えてカロリーも高くなくいつもの食事でプラスしやすいですね。
■食物繊維含有量
- 干しいちじく 合計量10.9g 不溶性7.6g 水溶性3.3g
- 納豆 合計量6.7g 不溶性4.4g 水溶性2.3g
- ごぼう 合計量6.1g 不溶性3.4g 水溶性2.7g
- ライ麦パン 合計量5.6g 不溶性3.6g 水溶性2.0g
- アボカド 合計量5.3g 不溶性3.6g 水溶性1.7g
- キウイフルーツ合計量2.5g 不溶性1.8g 水溶性0.7g
食物繊維は便秘解消と対策、どちらにも効果的な栄養成分です。ただ不溶性と水溶性のどちらか一方に偏ると、食物繊維としての効果が期待できなくなってしまいます。不溶性と水溶性の2種類の食物繊維は、摂取するときのバランスが大切です。
普段の食事でどちらの食物繊維もバランスよく含んでいる食べ物もスマートに利用して、便秘対策に努めましょう。