LDLコレステロール上昇の原因には女性特有の理由も
体内に存在するコレステロールは、20%が食品の摂取によるもの、残りの80%が体内で生成されるものです。
女性のコレステロールが上がる原因として考えられるのは次のようなことです。
- 更年期以降の女性ホルモンの分泌の低下
- 洋菓子など甘い物を好む
- 食事の量は少なくても、脂質の割合が多い
- 家事や仕事、子育てに追われて運動をする時間がない
一般的原因は食生活や生活習慣、遺伝、病気
コレステロール値を上げる原因は、おもに食生活や生活習慣、遺伝、病気です。その中でも、食生活や生活習慣によってコレステロール値が上がるケースが多いです。具体的には次の通りです。
- 食べ過ぎ
- 肥満(体に必要以上の脂肪がたまっている状態)
- コレステロールや飽和脂肪酸を多く含んだ食品の摂り過ぎ
- 食物繊維の摂取不足
- 運動不足
コレステロールの高い人は、遺伝的な要素と、食生活や生活習慣の両方が原因になっていることも多いです。その両方が原因で引き起こされる病気は次の通りです。
- 糖尿病(インスリンの作用不足が脂質の代謝に悪影響)
- 甲状腺機能低下症(甲状腺ホルモンが減るため、血液中にコレステロールが滞る)
- 閉塞性黄疸(肝臓の病気)、ネフローゼ症候群(腎臓の病気)など
更年期以降の女性はエストロゲン不足が原因の一つに
女性ホルモンのエストロゲンは、悪玉のLDLコレステロールを減少させ、善玉のHDLコレステロールを増やして血管を守り、血流をよくする働きがあります。そのため、エストロゲンの分泌が減少する更年期以降になると、コレステロールが増えてしまいます。
LDLコレステロールの基準値は40代半ばで上昇
コレステロールは、2015年4月から基準値が変わりました。大きく変わったのは、女性のコレステロール基準値が、年齢によって細かく分けられた点です。
従来の基準値は『総コレステロール:140~199、LDLコレステロール:60~119』で、男女共に同じでした。最新の基準値は次の通りです。
- 男性『総コレステロール:151~254、LDLコレステロール:72~178』
- 女性(30~44歳)『総コレステロール:145~238、LDLコレステロール:61~152』
- 女性(45~64歳)『総コレステロール:163~273、LDLコレステロール:73~183』
- 女性(65~80歳)『総コレステロール:175~280、LDLコレステロール:84~190』
男女共に正常な範囲が広くなり、女性は年齢が上がるとともに正常値が高く設定されました。女性ホルモンの減少により、閉経後の女性は急激なLDLコレステロールの上昇がみられるため見直されました。
動脈硬化学会の基準は140以上、40以下は異常値
日本動脈硬化学会の示すコレステロールの基準は、LDLコレステロール140以上は高コレステロール血症と定め、LDLコレステロールが高いと、心筋梗塞や脳梗塞になりやすいとしています。また、善玉のHDLコレステロール40未満を低HDLコレステロール血症としています。
一般女性と40代半ば以降の基準値の違い
成人女性のコレステロールの基準値は、総コレステロール200未満、LDLコレステロール120未満と定められています。ですが、コレステロールを年齢別の平均値で見ると、40代以降から、総コレステロールが正常でないことがわかります。
【女性のコレステロールの平均値】
- 20代:総コレステロール 182、LDLコレステロール 97
- 30代:総コレステロール 188、LDLコレステロール 101
- 40代:総コレステロール 201、LDLコレステロール 113
- 50代:総コレステロール 219、LDLコレステロール 129
- 60代:総コレステロール 218、LDLコレステロール 135
- 70代:総コレステロール 211、LDLコレステロール 124
更年期以降の体質の変化の関係で、閉経後にコレステロールが正常値を越える傾向にあります。そのため、基準値が、【総コレステロール】45~64歳:163~273、65~80歳:175~280、【LDLコレステロール】45~64歳:73~183、65~80歳:84~190となりました。
あなたのLDLコレステロールは高い?低い?疑われる病気
LDLコレステロールは、特に高い場合が問題視されがちですが、実はコレステロールは私たちの体にとって、とても重要な物質です。
コレステロールは、体内において、細胞やホルモン、胆汁酸の材料となるなど、さまざまな役割を果たしているのです。そのため、高すぎても低すぎても、色々な疾患の原因となります。
【高い場合】動脈硬化、脂質異常症、糖尿病、甲状腺機能低下症など
LDLコレステロールの値が高いと、動脈硬化を引き起こし、様々な病気の原因となります。この中でも最初に起こりやすい病気は脂質異常症です。血管の中を流れている血液にLDLコレステロールが多く含まれていて、一般的には「ドロドロ血」と呼ばれます。血管が破れたり詰まったりして、とても危険な状態です。
また、脂質異常症と糖尿病には深い関係があり、糖尿病患者の約20~50%の人が脂質異常症を発症しています。40歳以上になると、5人に1人が糖尿病にかかっていると言われています。LDLコレステロールが高くなると、甲状腺ホルモンの血中濃度が下がり、甲状腺機能低下症になることもあります。
【低い場合】肝硬変、甲状腺機能亢進症、臓器機能低下、脳出血など
LDLコレステロールを作るのは肝臓なので、低い場合も、まず疑われるのが肝臓の疾患です。肝炎によって傷ついた細胞が修復を繰り返しているうちに線維化し、肝臓全体が硬くて小さくなる肝硬変や、コレステロールを大量に消費してしまう甲状腺機能亢進症が疑われます。
LDLコレステロールは、血管や細胞を保護する重要な働きをします。なので、LDLコレステロールが低いと、その働きが不完全となり、血管や細胞が傷つきやすい状態になってしまうので、場所が悪ければ脳出血になってしまうこともあります。
LDLコレステロールを下げるのに良い食品やサプリ
コレステロールを下げるには、LDLコレステロールを血液中から減らしてくれる食品や、体外へ排泄してくれる食品を摂るのが効果的です。
コレステロール値を下げる食品と言えば、青魚です。他にも海藻や野菜、大豆製品など、毎日の食事の中で意識して摂るようにしましょう。
【DHA・EPA】イワシ、サンマ、サバ、カツオ、マグロなどの青身魚
DHAとEPAは、イワシやサンマ、アジ、マグロ、ブリ、カツオ、サバなどの背中が青い魚に多く含まれています。体内では作り出せない成分なので、食べ物から摂らなければ不足してしまいます。DHA・EPAは、LDLコレステロールを減らし、肝臓での中性脂肪の合成を押さえる働きがあります。さらに血液をサラサラにする効果もあり、コレステロールや中性脂肪で悩む人には、とても重要な成分です。
【食物繊維】野菜や海草
食物繊維には水溶性と不溶性がありますが、コレステロールの吸収を妨げる水溶性の食物線維が多く含まれているのが、にんにく、ごぼう、アボガド、枝豆、オクラ、明日葉、わかめ、もずく、昆布などです。水溶性の食物繊維は、腸内で消化されず、コレステロールや脂肪、糖、胆汁酸などを自身に付着させて、便として体外に排出してくれます。
【サプリ】大豆イソフラボンやアントシアニンなどのサポニン
サポニンは、イソフラボンやアントシアニンと同じ配糖体という成分のひとつで、大豆や、高麗人参、田七人参などに多く含まれています。サポニンには様々な作用がありますが、特にLDLコレステロールを下げる作用は注目されています。
大豆製品は日頃から手軽に摂ることができますが、高麗人参や田七人参はスーパーなどで購入できるものでもないので、サプリで効率よく摂ることをおすすめします。サポニンの成分が含まれたサプリは色々ありますので、飲みやすさやコスパなど、自分に合った物を選びましょう。
LDLコレステロールと中性脂肪を一緒に改善できる?
LDLコレステロールと中性脂肪の基本的な改善策として、一番にあげられるのが食生活の見直しです。食生活を改善しない限り、LDLコレステロールと中性脂肪は増え続けます。
まずは食べ過ぎをやめて、野菜や果物、海藻類などを中心に、バランスのとれた食事を心掛けましょう。DHAやEPAを積極的に摂取することも大事です。
中性脂肪とLDLが一定よりも高いと脂質異常症に
中性脂肪やコレステロールが増えすぎると、脂質異常症という病気になります。「LDLコレステロールが140以上、HDLコレステロールが40以下、中性脂肪が150以上」、のどれかひとつでも当てはまると、脂質異常症になります。脂質異常症は高血圧の悪化や腎臓病なども引き起こしますので、早期発見が重要です。
普段使っている油の摂り方にも注意
油にも色々な種類がありますが、調理に使う油だけでなく、肉や魚、ナッツ類にも油は含まれています。その油を形成している「脂肪酸」の種類によって、コレステロールへの影響は違います。バターや肉類など、動物性の脂に多く含まれる「飽和脂肪酸」は、LDLコレステロールを増やしてしまうのですが、動物性脂肪は摂り過ぎてしまう傾向にあるので、控えるようにしましょう。
コレステロールの低下が期待できるのは、植物油や魚に多く含まれる「不飽和脂肪酸」です。善玉のHDLコレステロールは減らさずに、LDLコレステロールと中性脂肪だけを減らす働きがあります。色々な種類の油をバランス良く摂りながら、魚や植物性の油を摂るように心がけるとよいでしょう。
有酸素運動で脂肪燃焼、無酸素運動で基礎代謝UPで両方改善
有酸素運動は、酸素を必要とする運動です。体内に取り込んだ酸素を使って、糖質や脂肪を燃焼させ、エネルギーを生み出します。体脂肪を燃焼することで、LDLコレステロールや中性脂肪の減少を期待できます。主なものに、ウォーキングやジョギング、水泳、縄跳び、サイクリングなどがあります。
さらに、無酸素運動の筋トレをプラスすると、基礎代謝量がアップし、寝ている時や安静時でもネルギー消費ができるようになります。有酸素運動と筋トレを効率よく行うために、筋トレの後に有酸素運動をする順番が理想的です。
少しの意識改善でLDLコレステロール上昇は抑えられる
LDLコレステロールが高いと、高コレステロール血症になり、動脈硬化など、命に係わる事態にもなりかねません。
コレステロールの改善は、食事の見直しが重要ですが、コレステロールの高い食品にばかり注意するのではなく、自分のできる範囲で、コレステロールを下げる食品を積極的に取り入れるなど、ちょっと意識を変えて楽に取り組んでみてください。
食事の他に、毎日の生活の中で適度な運動をする習慣をつけたり、サプリを利用したり、自分に合った方法を見つけることで、長く続けることができるでしょう。