健康診断でひっかかる…『コレステロール』って何?
健康診断では、コレステロールの値が気になる方も多く、健康に悪いようなイメージを抱いてしまいがちですが、コレステロールは生きていくうえで欠かせない重要な役割をもっています。
コレステロールは、脂肪の消化吸収を助ける胆汁酸を作る成分で、ヒトの体内に約100~150g位含まれています。
コレステロールは、男性ホルモン、女性ホルモン、副腎皮質ホルモンを作る原料となったり、体を作っている何兆もの細胞の細胞膜を構成する成分となり、血管の強化や維持にも大切な働きがあります。
知ってた?数年後健康診断のコレステロール基準値は変更される!
2014年4月に、日本人間ドック学会と健康保険組合連合会が、「人間ドックの新基準案」を公表したのをご存知でしょうか?
新基準値が公表された理由は、従来の基準値に統一性が無くバラバラだったため、健康診断の基本検査となる、血圧やBMI・血糖値・コレステロール値等の数値を緩和する、新しい基準案が発表されたのです。
2015年4月から、新基準で運用する話も出ていましたが、今の時点では未定のようです。今後5年~10年にわたって追跡調査を行い、病気発症との関連や、基準範囲の人たちの健康状態を調べたうえで、数値の検討を続けるといった状況です。
どう変わる?健康診断での総コレステロール値の基準値
現在(人間ドック学会) 140~199 (単位 mg/dl)
変更後 男性 151~254
女性 30~44歳 145~238
45~64歳 163~273
65~80歳 175~280
総コレステロールとは、血液中に含まれるすべてのコレステロールを測定した総量のことで、HDLコレステロールと、LDLコレステロールなどを合わせた値です。
変更前は、男女の区別や年齢による区別もなく、一律にコレステロールの基準値が設定されていました。
しかし、性別や年齢で正常範囲にかなりの違いがあることが確認されるようになり、新基準値では、総コレステロールとLDLコレステロールの両方とも、男性と女性で区別されることになりました。
更に女性は年齢によっても基準値が区別されることになりました。
総コレステロール値
現在(人間ドック学会) 140~199 (単位 mg/dl)
変更後 男性 151~254
女性 30~44歳 145~238
45~64歳 163~273
65~80歳 175~280
新基準値は、男女ともに正常となる範囲が拡大され、女性は年齢が高くなるにしたがって正常となる値が高くなるように見直されています。
総コレステロールの算出方法は、
「総コレステロール値-HDLコレステロール値-中性脂肪値÷5=LDLコレステロール値」
で求めることができます。
現在では、総コレステロールの数値よりも、HDLコレステロール・LDLコレステロール・中性脂肪の、比率のバランスが重要視されています。
総コレステロール値が高くても低くても駄目な理由
総コレステロール値が高いと動脈硬化を引き起こし、様々な病気の原因となります。その他にも、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症、脳梗塞、脂質代謝異常、甲状腺機能低下症 などがあげられます。
しかし、総コレステロール値が低すぎると免疫機能が低下し、栄養吸収障害、低βリポたんぱく血症、肝硬変、脳卒中、呼吸器疾患、そして、がんや、うつ病になるリスクも高まってしまいます。
このように、コレステロール値が高い場合も、低い場合も注意が必要なのです。
高いと心配!健康診断でのLDLコレステロール値の基準値
現在(人間ドック学会) 60~119 (単位 mg/dl)
男性 72~178
女性 30~44歳 61~152
45~64歳 73~183
65~80歳 84~190
健康診断で、LDLコレステロールの値が高いと心配になりますよね。気になるLDLコレステロールの基準値は、どのように設定されているのでしょうか?
LDLコレステロールとは『悪玉コレステロール』のこと
LDLコレステロールとは、悪玉コレステロールのことを言います。
LDLコレステロールは、肝臓から体の隅々まで、コレステロールを運ぶ働きをしているのですが、LDLコレステロール値が高くなると、コレステロールが血管を詰まらせて、動脈硬化などを引き起こす場合もあるため、悪玉コレステロールと呼ばれています。
しかし、悪玉コレステロールの働きがなければ、コレステロールが運ばれずに体調不良を起こしてしまいます。悪玉コレステロールは、血液中のコレステロール値が正常な範囲であれば、生命維持には欠かせないものであり、「悪玉」ではないのです。
このLDLコレステロール値に関しても、総コレステロール値と同様に新しい基準値が公表されました。
LDLコレステロール値の基準値
現在(人間ドック学会) 60~119 (単位 mg/dl)
変更後 男性 72~178
女性 30~44歳 61~152
45~64歳 73~183
65~80歳 84~190
変更後は、LDLコレステロールも、男女別に数値が分けられました。女性は更に年齢別に区分けされ、年齢が高くなるにつれて基準値も上がっています。
実は低くても良くない!脳卒中の危険?
実は、コレステロール値が低い人は、血管がもろくなり、脳卒中を起こしやすくなる危険が高まります。
悪者は活性酸素と結び付いた『酸化悪玉コレステロール』!?
酸化悪玉コレステロールとは、悪玉コレステロールが活性酸素と結びつくこと(酸化すること)によってできるのですが、実は、この酸化悪玉コレステロールがとても危険と言われ話題になっています。
酸化悪玉コレステロールは心筋梗塞や脳梗塞の原因に
最近の研究によると、酸化悪玉コレステロールが、心筋梗塞や脳梗塞の原因になると考えられています。これは酸化悪玉コレステロールが、血管の壁に血液のこぶと言われる、プラークを作る原因となってしまうからです。
健康診断で酸化悪玉コレステロール値を増やさないためには!?
健康診断で酸化悪玉コレステロール値を増やさないようにするために、日常の生活の中で気を付けなければならないことがあります。
喫煙をやめる
タバコの煙には活性酸素である過酸化水素がたくさん含まれ、この活性酸素は、鉄などの金属イオンに出会うと非常に酸化力の強い活性酸素に変わります。
百害あって一利なしと言われるタバコは、酸化悪玉コレステロールの原因になり、喫煙者だけでなく副流煙を吸う周りの人にも悪い影響を与えてしまいます。
何度も温めなおした動物性脂肪は摂らない
酸化したコレステロールを摂取することでも、体内の酸化悪玉コレステロールは増えてしまいます。動物性脂肪は酸化しやすく、更に加熱を繰り返すことで、より酸化してしまうので、何度も温めなおした動物性脂肪は摂らないようにしましょう。
長期保存したバターやマヨネーズにも注意
長期保存したバターやマヨネーズは、酸化が進み劣化して変色が起こっていることがあります。バターやマヨネーズも、なるべく早く使い切るように注意が必要です。
抗酸化作用のある食べ物を食べる
酸化悪玉コレステロールの対策には、抗酸化作用のある食べ物を摂取するのもおすすめです。トマト・プチトマト・パプリカといった赤い色の食材には、抗酸化作用があり、鮭には、ビタミンEの500倍の抗酸化作用があります。
低いと心配!健康診断でのHDLコレステロール値の基準値は?
健康診断でのHDLコレステロールの基準値はどのようになっているのでしょうか?低いと心配になるHDLコレステロールについてご説明します。
今のところ変更なし 40~119mg/dl
人間ドック学会によるHDLコレステロールの基準値は、40~119(単位 mg/dl)です。
今のところ変更は無く、HDLコレステロール値が、30~39は要注意、29以下、120以上を異常値と定めています。
HDLコレステロールとは『善玉コレステロール』の事
HDLコレステロールは、体内に蓄積された古いコレステロールを回収し、動脈硬化の原因になる血管壁のコレステロールを取り除く働きがあり、動脈硬化の予防に役立ちます。
そのような有効な働きがあるため、善玉コレステロールと呼ばれ、数値が低いほうが動脈硬化の危険度が高く、基準値よりも高い場合は動脈硬化になりにくいのです。
中性脂肪を減らすとHDLコレステロールは増える!
中性脂肪とHDLコレステロールは、一方が増えれば一方が減るという、シーソーのような関係にあります。中性脂肪を減らすことによって、HDLコレステロールを増やすことができます。
おすすめはウォーキングなど有酸素運動
運動をすると、体内の筋肉が酸素を必要とし、酸素不足の所へ早く供給しようとするため、心臓は血流を早めます。その結果、心拍や脈拍数が上がり、血行が促進され、中性脂肪の代謝・燃焼を促し、HDLコレステロールが増加します。
運動の中でも、おすすめはウォーキングなどの有酸素運動です。ウォーキングならば、特別な用意も不要なので、気軽に始められるところがいいですね。
健康診断でコレステロール値を正常に保つには
健康診断でコレステロール値を正常に保つには、どのようにしたらよいのか具体的な方法をお伝えします。
適度な運動をする
コレステロール値を正常に保つには、運動習慣を付けることが大切です。思いついたときに激しい運動をするのではなく、日常から適度な運動をすることがポイントです。その結果として基礎代謝量が増え、脂肪が燃えやすい身体をつくることができます。
バランスの良い食生活
コレステロール値は食生活に深く関係があります。動物性脂肪を多く摂り過ぎず、魚や野菜を中心とした栄養のバランスのとれた食事を摂ることや、夜遅い時間に食事をするのではなく、規則正しい時間に食べるといった食習慣も大切になります。
実は食事制限は撤回されている
日本動脈硬化学会は、米国の心臓病関連学会や農務省から発表されたガイドラインにおいて、今まで推奨していたコレステロール摂取制限に関する声明文を発表しました。
しかし、コレステロール値については個人差が大きいため、食事制限は撤回されましたが、対象になるのは健常者であり、高LDLコレステロール血症患者に当てはまるわけではないと注意を促しています。
ストレスを溜めすぎない事も大切
ストレスが増加すると体内に活性酸素が増えてしまい、身体はそれを克服しようとして、脂肪組織や肝臓から脂質を取り出して、血中に流します。そのため、特に食べ過ぎていなくても、血中にコレステロールが増えてしまうのです。
ストレスを溜めすぎると、悪玉コレステロールが増加し、善玉コレステロールが低下してしまいます。適度な運動をして、リラックスすることも心がけ、健康な日々を送りましょう!