思い出せない・・・ひどい物忘れの原因は?
何かをしようと思って立ち上がったはいいけれど、「あれ、これから何をするんだっけ。」といった経験はありませんか。思い出そうとしてもなかなか思い出せず、忘れてしまう。
このような経験は、誰しも一度や二度はあるでしょうが、物忘れが頻繁に起こるようでしたら、病気が潜んでいる場合もあるので注意が必要です。
物忘れの種類や原因は様々で、その中でも「加齢」が原因のものと「病気」が原因のものに大きく分けられます。もの忘れの原因をこの機会に是非知っておきましょう。
脳の老化
脳は20代から老化し、それが原因で物忘れが引き起こされることがあります。物忘れは「加齢」が大きな原因の一つで、年齢を重ねるごとに脳細胞は減少し、脳の活動領域が減っていきます。
20代から始まる脳の老化で記憶力が低下し、60代になると判断力・記銘力・適応能力も低下してしまいます。60代は、多くの人が仕事を退職する年齢で、社会との関わりも減るので脳に刺激が少なくなります。
脳を使うことが減ってしまうので、物忘れに悩む人が増えるのも60代は多いのです。
過剰なストレス
ストレスが溜まると忘れっぽくなるという話を聞いたことはありませんか。過剰なストレスが原因で物忘れが引き起こされる可能性もあります。
ストレスがある状態は集中力が低下し、目の前で起こることへの理解力・記憶力も落ちます。仕事で上司から目の前で言われたことを忘れてしまったり、会議の内容が理解できず頭に入ってこなかったり、物忘れや記憶がきちんと作られなくなってしまうことがあるのです。
記憶は脳の海馬で作られます。そして、海馬から電気信号が送られて覚えることが脳内の保管庫に留まるという仕組みで記憶になります。しかし、ストレスがある状態では電気信号にコルチゾールが介入して邪魔をするので、記憶がきちんと作られなくなります。
睡眠不足
人は寝ているときに脳と身体の疲れを回復するので、睡眠不足では脳にも身体にも様々な支障が出ます。睡眠が不足している状態では、脳細胞の修復や記憶の整理が行えません。
さらに脳に存在するデリケートな部分で、記憶を司る「海馬」という部分が衰えてしまいます。私たちは目・耳から情報をキャッチすると、大脳皮質にその情報が届き、それから海馬に移動します。
睡眠不足で海馬の神経細胞が衰えてしまうと、長期記憶(古い出来事)は覚えているけれど、短期記憶(新しい出来事)が覚えられないという症状が出ます。これは物忘れの典型的な症状です。
睡眠不足が原因の物忘れは10代~20代の若い世代で多いです。若い世代は、入学・就職など様々な出来事が起こり、環境の変化があるので、どんどん知識を増やしている時期です。
この時期は、脳で多くのことを処理して記憶する、ということが盛んに行われていて、たくさんのエネルギーが必要です。脳はたくさん働いて疲弊するので、10代~20代は睡眠が非常に大切なのです。
ですが、現代の若者は、テレビ、ゲーム、スマホ、パソコン、夜遊び、など様々な原因で睡眠時間は減少傾向し、眠いまま学校や仕事に行くような状態が続くことで、記憶力が低下している可能性があるのです。
病気
病気が原因で記憶力が低下する場合もあります。その中で、「アルツハイマー型認知症」と「脳血管性認知症」についてとりあげてそれぞれどのような病気なのか見ていきましょう。
アルツハイマー型認知症は女性に多く、なぜ引き起こされるのか原因がまだはっきりとわかっていない病気で、なってしまうと進行を遅らせることはできるのですが完治はできないです。
さらに進行すると、過食、徘徊、暴力、睡眠障害、などの異常行動を伴うので、このような症状があらわれたら加齢やストレスによる単なる記憶力の低下ではありませんので、すぐに病院を受診してください。
次に、「脳血管型認知症」についてです。名前からも推測できる通り、脳の障害が原因で起こる認知症です。女性よりも男性の方が多く発症し、物忘れ以外にも、頭痛・めまい・無気力、といった症状を伴います。
ストレスを解消すれば物忘れは良くなる!?
過剰なストレスがある状態では、集中力が低下して結果的に目の前で起こることへの理解力・記憶力が落ち、物忘れが起き、ストレス状態が長く続くと記憶がきちんと作られなくなってしまう可能性があるということは学習しましたね。
ですが、ストレスが原因の物忘れはストレスを解消すればストレスの原因がなくなるので症状が軽減することがあります。
現代はストレス社会ですから、ストレスをゼロにするのは困難です。しかし、ストレスを過剰に感じなければ物忘れを減らす可能性が高まるので、ストレスが起きたときにうまく解消できる方法を知っておきましょう。
ストレスに対抗するには、精神の安定を促す「セロトニン」と呼ばれる脳内ホルモンを増やすことが重要です。セロトニンは別名「幸せホルモン」とも言われていて、セロトニンが増えれば幸福感も増えるのです。
朝起きて太陽を浴びる、軽い運動をする、思いっきり笑う、など日常生活のちょっとしたことで増やすことができます。
また、自分でストレスを解消する趣味を持ったり、ストレスは一人で溜め込まない方が良いので信頼できる友人に相談したり、うまくストレスを発散することができるだけで、頭の働きがよくなって集中力が戻り、もの忘れが減ったという人も多いです。
良い睡眠は物忘れに効く?ぐっすり眠ろう!
人は寝ているときに、その日に使った脳と肉体の疲れを回復します。質の高い睡眠は、身体の疲れを回復させて脳細胞の修復と記憶の整理をするので物忘れも防ぎ、頭も身体も元気になります。
良質な睡眠をすることは、物忘れを防ぐためにも重要なのですが、ポイントはただ長い時間寝ればいいわけではなくて、できるだけ質の良い睡眠を取ることです。
眠りが浅くて何度も目が覚めてしまったり、長い時間布団に入ってはいるけれど眠くならない、などの状態では脳が休まりません。布団に入ったらぐっすり眠ることが脳を休めるには大切ですから、ぐっすり眠れる方法を紹介するので参考にしてください。
寝る前はホットミルクでリラックス!
乳製品は眠気をもたらす食べ物や飲み物、として有名なのでホットミルクを寝る前に飲むと眠くなるという話を聞いたことがある人も多いでしょう。ホットミルクが睡眠に有効だと言われているのは、「トリプトファン」という必須アミノ酸が含まれているからです。
牛乳には眠りに不可欠な栄養素「トリプトファン」含有量が多く、寝る前にホットミルクを飲むとトリプトファンが眠りを誘う「メラトニン」というホルモンに変化して、だんだん眠くなってきます。
まず体内に入ったトリプトファンは脳に届きます。脳の松果体でトリプトファンが「セロトニン」に変化して、「セロトニン」が代謝されて分解され「メラトニン」に変化するのです。
睡眠ホルモン「メラトニン」は、体外からトリプトファンを摂取することで、合成されて分泌されるのでトリプトファン摂取量が減ると、睡眠障害を起こしやすくなってしまうのです。
さらに、牛乳を温めたホットミルクは、胃腸を温めて寝付きやすくする効果もあります。胃腸が温まると身体は上がった体温を下げようとするのですが、温まった体温が下がるときに深い眠りに入れるのです。
これは、寝る前にお風呂やシャワーに入るとよく眠れることと同じで、体温を上げた直後に体温が下がることで寝付きがよくなることと同じ原理です。
また、牛乳に含まれているカルシウムは神経伝達を助けてイライラを鎮める作用があります。カルシウムが不足すると、神経がうまく伝達できなくなってイライラして寝付きにくくなります。
寝る前にホットミルクを飲むと、イライラを鎮まってリラックスした気持ちで睡眠できるのです。ホットミルクにはビタミンB群(ビタミンB1、B2、B12)も豊富に含まれていますが、これも脳の神経伝達をスムーズにする作用があるので、脳を休める睡眠にとって有効ですね。
1日7時間は眠ろう!
睡眠は短すぎも長すぎもよくありません。最適な睡眠時間は個人差がありますが、睡眠で記憶力を高めるためには1日7時間程度は眠るようにしましょう。
人の脳は精密に作られていて、起きて活動している間は記憶を整理することができず、睡眠中に脳の記憶に関する部分が整理されます。寝ている時の脳内では、必要な情報を残して不要な情報を消去し、明日の記憶が蓄積できる容量を確保するという作業が行われています。
睡眠が不十分だと、頭の中が整理整頓されていない状態で、例えば覚えた人の名前が、どこの引き出しにあるのかわからないような状態になってしまうので、思い出すことができず物忘れが引き起こされます。
記憶の整理整頓をして、物忘れを防ぐためにも1日7時間は眠るようにしたいものです。日本人の睡眠時間は年々減ってきているので、7時間眠っていないという人も増えています。物忘れが気になる人は睡眠時間を意識して毎日眠るようにしてください。
うつ病でも起こる物忘れ・・その対策とは
加齢のせいだからしょうがないと思っていた物忘れも、実は「うつ病」が原因だったという場合もあります。
うつ病の物忘れの場合は、加齢で脳の老化が起こったことが原因とは違って、無気力・思考制止、などの抑うつ症状が原因だと考えられています。ここからはうつ病が原因の物忘れについて、うつ病がなぜ起こるのか、うつ病の対策、などを学習しましょう。
神経伝達物質の減少で起こる
うつ病では、神経伝達物質の放出量と受容体(レセプター)が減少することが原因で頭の回転が鈍くなって物忘れや記憶力の低下を引き起こすと考えられています。「集中できない」「考えられない」「思い出せない」という症状が起こります。
うつによる物忘れは治る!
うつ病が原因の物忘れは、うつ病が改善することで物忘れも治ることが多いです。うつ病は神経伝達物質が少なくなったことが原因で、脳自体が壊れてしまったわけではありません。神経伝達物質がしっかりと出るようになれば、うつ病は治ります。
物忘れの原因がうつ病と診断された場合は、うつ病の治療にしっかり取り組んでうつ病を治すことができれば物忘れも自然になくなります。
病院へ行こう!
物忘れの原因がうつ病かなと感じたら、一刻も早く病院を受診しましょう。うつ病が原因の物忘れは、脳が破壊されたわけではなく、神経伝達物質が減少したことが原因なので、神経伝達物質をきちんど出せればうつ病が改善し、物忘れも改善できます。
病院では、適切な薬物治療とカウンセリングによる精神療法が行われます。うつは適切な治療を行えば必ず治る病気なので、信頼できる医師の指示を守って薬物療法と心理療法を受けることで症状が改善されていき、それに伴って物忘れ症状もなくなってくるでしょう。
運動不足解消で脳も改善
有酸素運動などの適度な運動をすることで脳が改善されて物忘れの症状もよくなります。加齢により脳細胞は減ってしまいますが、記憶を司っている海馬を鍛えれば物忘れの予防に効果があります。
海馬は有酸素運動で鍛えられるので、できれば毎日運動ができるといいですが難しいという場合は、週3回40分程度のウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動をして物忘れを防ぎましょう。
暗算やしりとりなどで頭で考えながら運動をすると脳にも刺激が加わるので、さらに効果アップです。
断食や小食で脳が回復
うつ病の改善には、断食や少食で脳を回復させるという方法もあります。一般的には1日3食が普通ですが、1日3食では自律神経が乱れてうつ病になりやすい体になってしまうという考えがあります。
少食で空腹感を感じることで自律神経の乱れを正常な状態に戻してうつ病を改善します。また、食べる量を減らすことで腸内に蓄積された老廃物の排出がスムーズに行われるようになり腸内環境が整います。
老廃物や毒素が体外に排出されると腸内の悪玉菌が減って善玉菌が増えます。善玉菌が増えるとセロトニンなどの神経伝達物質が作られて自律神経が整い、うつ病が改善されます。
そして、断食中は「ケトン体」が体内で作られるのですが、この物質は脳の栄養素になり、脳をすっきりさせるので脳が回復します。断食中はお腹が空くので考えることをストップするようになります。
すると今まであんなに悩んでいたことがどうでもよくなり、悩みが減るのでうつ病に効果があるのです。
今日は何日??危険な物忘れの症状とは?
認知症などの病気により物忘れが引き起こされる場合もあります。物忘れは、脳の老化減少で起こる場合と認知症などの病気によるものがあるので、物忘れが多いと感じた時に病気による物忘れなのか不安になりますよね。
病気による物忘れの場合は、特徴的な症状が出現することがあります。物忘れが加齢か病気か判断できるように、病気による物忘れの場合に起こる症状を知っておきましょう。また、症状に当てはまる場合は、物忘れ外来を受診して適切な治療をすることをおすすめします。
数秒前が分からない
「数秒前が分からない」のは病気による物忘れの症状です。
ちょっと前にしようとしたことを思い出せないということは健康な人でも起こることがあるので、認知症や若年性アルツハイマーなどの病気と気づかないケースが多く、重症化してしまうこともあるので、この症状が出たら病院を受診してみることをおすすめします。
計算が出来なくなった
計算ができなくなったり、計算ミスが増えたりするのも病気が潜んでいる可能性があります。計算でわかりやすいのは、お金の計算です。
細かいお金の単位が分からなくなったり、小銭を支払うことができなくなったり、といった症状があるのでお札ばかり出して財布が小銭だらけになります。買い物の際にこのような傾向はないか、財布は小銭であふれていないかチェックしてみましょう。
計算ができないというのは、加齢やストレスによる物忘れでは、ミスは起こりやすくなるとしても全くできなくなるということはあまり起こりませんので、そもそもお金の単位が分からないというような場合は、病気を疑ってみてください。
場所・日時が分からない
認知症などの病気では、時間・場所に関する記憶が混乱するという特徴があります。基本的な情報である現在の日付・時刻を把握することができません。
普通の物忘れでは基本的な情報を忘れるようなことはありませんから、自分のいる場所や方向感覚・日時が分からない、などの場合は可能性が高いと考えられます。
いつもの帰り道がわからなくなったり、どこかに出かけて帰れなくなった、今日が何月何日か、何時か、いまいる場所はどこか、など自分が置かれている状況自体が把握できないのであれば認知症であることを強く疑ってください。
人格が変わった
単なる物忘れでは人格は変わらないので、人格に変化が出るのであれば病気の可能性が高いです。病気の場合は、もともとその人が持つ性格の個性が現れるようになります。
もともと怒りっぽいとか、もともと神経質とか、人それぞれ持っている性格の個性は違いますが日常生活を送る上では他の人との関わりの中でそれをさらけ出すのではなく、ある程度我慢して生活しています。
しかし、病気になると急に怒りっぽくなったり、神経質になったりといった症状が出てきます。このように、人格が前と変わったという場合は認知症が進行している可能性があるので、病院を受診することをおすすめします。
ドーパミン分泌してやる気アップ&物忘れ改善
ドーパミンとは脳内ホルモンの一種・神経伝達物質のことです。ドーパミンは脳の楽しさ、意欲、学習、心地よさ、などに係わっています。
ドーパミンが分泌されると、脳の働きが向上するので、やる気がアップします。ドーパミンの分泌が少ないと注意力・集中力の低下が起こり、物忘れが引き起こされます。
さらに、無気力になったり、精神病にかかることもあるので、達成感を味わったり、感動したり、笑ったり、と感情豊かな毎日を過ごしてドーパミンを分泌させましょう。
そんなに感情豊かに過ごせないという場合は、作り笑いでも効果があるのでおすすめです。ドーパミンを分泌して自然とやる気を出し、物忘れを改善しましょう。