話題のロコモティブシンドロームとはどんなもの?
ロコモティブシンドロームという言葉は、近年ネットや雑誌、テレビでも見かけることが増えましたが、この言葉の意味は一体何でしょうか。
今話題のロコモティブシンドロームについて知るために、まずは「ロコモティブシンドローム」という言葉の意味と、この言葉ができた背景や理由を見ていきましょう。
ロコモティブシンドロームとは?
ロコモティブシンドローム(locomotive syndrome)の定義は、「運動器の障害」のために移動機能が低下し、「要介護になる」リスクの高い状態のことです。略称はロコモと呼び、和名では運動器症候群と言います。
ロコモティブシンドロームは、筋肉や骨、脊椎版、軟骨、関節、などの運動器に障害が出たことで「歩く」「立つ」といった日常生活で必要な機能が低下した状態です。これが進行してしまうと介護が必要になるリスクが上がり、日常生活にも支障が出てしまうのです。
日本整形外科学会が提唱
ロコモティブシンドロームは2007年(平成19年)に日本整形外科学会が「超高齢社会の今後を見据え、新たに提唱した概念」のことで、まだまだ歴史は浅いです。
「運動器に支えられて私たち人間は生きているので、運動器が健康であることが重要で、それについて医学的な評価と対策が必要だということを日々意識してほしい」というメッセージがロコモティブシンドロームの提唱には込められているのです。
ロコモティブシンドロームが提唱された背景にはいくつかの背景と理由があります。まず、日本は高齢化社会と呼ばれており、65歳以上の高齢者の割合がますます増えて、高齢化がこれからさらに進行していきます。
そして高齢化が進むと高齢者人口が増加し、要介護者が激増すると予想されます。要介護状態になるのを防止するには運動器の障害を防止することが重要だと考えられます。
加齢にともなって運動機能は自然と落ちてしまうので超高齢社会である日本のこれから先を考えて、国をあげて超高齢化社会への対策を行う必要があるという背景と理由から「ロコモティブシンドローム」が誕生しました。
超高齢社会「日本」の未来を見据えた時に、ロコモティブシンドロームを防ぎ、運動器を長持ちさせて健康寿命を延ばすことが大切なのです。
運動器とは?
ロコモティブシンドロームの重要なポイントとして「運動器」という言葉があります。この運動器とはどこを指すのか学習しましょう。
人間の身体は機能ごとに様々な器官が働いていますね。例えば、良く知っているものとして、呼吸器(気管や肺)、循環器(心臓や血管)、消化器(胃や腸)、などがあります。
呼吸器は呼吸に関係していて、酸素を身体に取り入れて二酸化炭素を排出します。循環器は血液を巡って身体に必要な酸素と栄養を吸収し、不必要な老廃物を運び排出します。消化器は食べたものの消化吸収に関わります。
それと同じように運動器は身体の運動に関する器官のことです。運動器は、関節、骨、神経、筋肉で構成されています。人が身体を自由に動かすことができるのはこれらの「運動器」が正常に働くからです。
筋肉や骨、関節などの運動器は別々で働くのはなく、連携して動いているのでどれかが動かなくなると身体もうまく動かなくなってしまいます。
ロコモティブシンドロームの原因
運動器に障害が出て、「立つ」「歩く」という動作が難しくなってしまうロコモティブシンドロームはどのようなことが原因となって生じてしまうのでしょうか。
ロコモティブシンドロームの状態が進行すると、要介護や寝たきり状態になる可能性もあるので、原因を知って早めに対策することが健康寿命を延ばすためには大切です。ロコモティブシンドロームの主な原因と、ロコモティブシンドロームと関係する病気を見ていきましょう。
運動器の病気
骨、筋肉、関節など運動器の病気で移動機能が低下するとロコモティブシンドロームになる可能性もあります。ロコモティブシンドロームと関係のある3大原因病の骨粗鬆症、変形性膝関節症、脊柱管狭窄症について見ていきましょう。
1、骨粗鬆症
閉経後の女性はホルモンバランスが乱れて通常よりも骨がもろくなっていて、この時に骨粗鬆症は起こりやすいです。
骨がもろくなっている状態では、少し転倒してしまっただけで普段なら平気なのに、骨粗鬆症になっていると少しの衝撃で骨折してしまう可能性が多くなります。
そして、骨折すると骨がもろくなっているので治癒に時間がかかってしまい、安静期間が長引くので、そのまま寝たきりとなるケースもあるのです。
2、変形性膝関節症
加齢や体の歪みが原因でひざの軟骨すり減ることで関節が痛む病気です。立ったり歩いたりすると痛いので、動くことを積極的にしなくなり、じっとした安静な体制を取りがちです。
自分から積極的に体を動かすことが減ってじっとしている毎日が続くとますます筋力が低下して、体の状態が悪くなります。それが原因で移動するのが困難となり、ロコモティブシンドロームを引き起こす可能性があります。
3、脊柱管狭窄症
背中の管がなんらかの原因で狭くなって神経が圧迫されて痛みを伴う病気です。背中の管は神経が通っているので、足腰に痛み、痺れを感じ動くのが困難になります。
脊柱管狭窄症も安静期間が必要なので、その期間が長引くとロコモティブシンドロームを引き起こすことがあります。
加齢による衰え
年齢を重ねると自然に身体機能は衰えていきます。筋力低下だけでなく、バランス能力低下、運動速度の低下、持久力低下、巧緻性低下、深部感覚低下、反応時間延長などが衰えます。
身体機能が衰えてきて動くことが減ると、さらに筋力は減りますし、バランス感覚が低下しているので転倒しやすくなって危険です。
筋力の低下
下半身やその他の筋力の低下がロコモティブシンドロームにつながることがあります。加齢により全身の筋力は自然と低下するし、運動不足の状況が続けば、若くてもロコモティブシンドロームになる可能性があります。
バランス能力の低下
加齢や運動不足でバランス能力も低下します。筋力とバランス能力の両方が低下すると、ロコモティブシンドロームになる可能性はより高くなります。
ロコモティブシンドロームになるとどうなるの?
ロコモティブシンドロームは運動機能の低下で起こることがわかりました。運動機能が低下してしまうと日常生活の中で様々な支障が出てきます。
それでもまだ自分1人で日常生活が送れればよいのですが、ひどい症状では自分1人で生活することが困難になることもあります。ロコモティブシンドロームになってしまうとどのような症状を引き起こすのか、具体的な症状を見ていきましょう。
寝たきり
加齢による衰え、バランス力の低下、筋力の低下、運動器の病気、などで運動機能が低下すると骨折や怪我をしやすくなり、怪我をした場合も治りにくくなります。
治るまでの間は安静にしている必要があり、その期間が長引いてしまうとその間に筋力が減り、自分一人では立ったり歩いたりすることが困難になる可能性があります。
一人で歩けないので手すりや壁につかまって動くようになるのですが、これは動きにくく、思うように移動できないことも増えます。そのような状態が続くとやがて、動くこと自体に消極的になります。
家でじっとしていることが増えて、最初のうちは座って1日の多くを過ごすのですが、筋力が低下しているので背筋や腹筋の力も少なくて座っている姿勢も徐々に辛く感じてきます。座っているのが辛いと、一番楽なのは、寝ている状態です。
寝ている状態でずっといると、いざ移動しようと思って起き上がった時にはもう自分一人の力では起き上がれなくなってしまい、「寝たきり」状態になってしまうのです。
要介護状態
介護保険制度で要介護認定を受けた状態のことを要介護状態といいます。判定項目は複数ありますが、原則6ヶ月以上入浴、排泄、食事などの日常生活の動作に常時介護を要すると見込まれると、要介護状態と判断され要介護認定をうけます。
介護が必要な人の数は年々増加していて、2000年と比べると現在では約2倍の人が介護が必要な状態なのです。
要介護状態になってしまう主な原因としては認知症、脳卒中などが有名なので運動器の障害が原因の場合もあることがあまり知られていないのですが、「関節の痛み」「骨折」などの運動器の障害で要介護状態になる患者が全体の5分の1もいるのです。
骨、関節など運動器の障害が高齢者に多いことが最近の研究でわかりました。運動器の障害を1人で2つ以上併発している人も多いのが現状で、整形外科で運動器の手術を受ける人の割合は50歳から急に上がります。
高齢になると筋力が落ち、骨がろもくなり、何も対策をしなければ自然と運動器を健康に保つことが困難になってきます。
骨折、膝関節疾患、脊椎疾患、などの症状になってしまうと、一人で立ったり歩いたりすることが難しく、自分一人で生活することのできない要介護状態になる可能性が高いのです。
健康寿命が短くなる
「健康寿命」という言葉をご存知ですか。「健康寿命」という言葉は最近よく耳にするようになった言葉です。同じ寿命を表す言葉で「平均寿命」という言葉はよく知られていますね。平均寿命は0歳の人がその後何歳まで生きるかを示しています。
国によって何歳まで生きたかを集計して人数で割ったものが平均寿命です。これに対し健康寿命は2000年にWHO(世界保健機構)が提唱した概念のことで、「健康上の問題がない状態で、日常生活が制限されずに送れる期間」のことを言います。
言い換えると、「日常的に介護が必要なく心身ともに自立して、健康に生活が送れる期間」のことです。日本は長寿国として知られていますが、ただ寿命を伸ばすだけではなく、健康に生活が送れる期間を伸ばそうという点に注目が集まっています。
厚労省の調査で2013年の日本人の平均寿命は男性79.55歳、女性86.30歳で、健康寿命が男性70.42歳、女性73.62歳となっています。平均寿命と健康寿命の差は男性で約9年、女性で約13年の差があります。
平均寿命と健康寿命との差は、健康ではない期間(日常生活に制限のある期間)をあらわしているので、男性は約9年女性は約13年の期間は、心身ともに自立して生活できない状態です。
長生きしていてもこの期間が長ければ健康でいきいきとした生活を送るのは難しくなります。ですから、平均寿命に健康寿命が少しでも近づくことが理想とされています。
これから高齢化がますます進行し、平均寿命は延びるが健康寿命は変わらない、もしくは下がると2つの寿命の差が拡大します。そうなると懸念されるのは高齢者の健康上の問題だけではなく、介護費、医療費の増加による家計への圧迫も考えられるのです。
ロコモティブシンドロームかどうかチェックする方法
ロコモティブシンドロームかどうかをチェックする方法に、「ロコモ度テスト」というものがあります。これは、移動機能(立つ、歩く、走る)を確認するためのテストです。
ロコモ度テストには立ち上がりテスト、2ステップテスト、ロコモ25、の3つのテストがあります。この3つのテストを定期的に行うことで自分の移動機能の状態を自分でチェックすることができます。
立ち上がりのテスト
「立ち上がりのテスト」は下肢筋力を測ることができます。片脚or両脚で40cm、30cm、20cm、10cmの4種類の高さの台から立ち上がれるかどうかで、ロコモティブシンドロームの程度をチェックします。
1、40cmの台から順番にはかるのでまずは40cmの台に両腕をお腹の前で組んで、両脚は肩幅に広げて座ります。この状態から反動をつけないように気をつけて立ち上がり3秒間キープします。立ち上がる時は脛が床に対して40cmの台の場合、約70度になるようにしてください。
2、両脚で立ち上がれたら、次は片脚で40cmの台から立ち上がるテストをします。最初の座った状態に戻って、左右どちらからでも良いので片足を上げます。上げた方の膝はまっすぐに伸ばすのは大変なので軽く曲げて良いです。
両脚の時と同じように反動をつけないように立ち上がって3秒キープです。出来たらもう片方の足でもテストします。
3、両脚も左右も片脚で立ち上がれたら40cmテスト成功です。後は10cmずつ低い台に移って同じことを繰り返します。40cm、30cm、20cm、10cmまで両脚片脚できたら全部成功です。一番低い台から立ち上がることができた方が良い結果となります。
4、もしも2で片脚で立ちあがるのができなかったら失敗です。片脚は測定終了なので、10cmずつ低い台に移って両脚でどの台まで低くして立ち上がれるかのテストを行いましょう。
2ステップテスト
「2ステップテスト」は歩幅、下肢の筋力、柔軟性、バランス能力、など総合的な歩行能力をチェックするテストです。
1、まずはスタートラインを決めてください。両足はつま先を合わせてまっすぐ姿勢よく立ちます。
2、スタートラインから2歩歩きます。この時できる限り大股で歩いてください。2歩歩いたら両足を揃えて立ちます。2歩歩く時や、両足を揃えた際にバランスを崩してしまった場合は失敗となるので注意してください。
3、スタートラインのつま先の位置から2歩分の歩幅(着地点のつま先)を測ります。ステップ値の計算方法は、2歩幅(cm)÷身長(cm)で導き出せます。
4、測り終わったら再度同じことを行って2回測って良かったほうの記録を採用してください。
ロコモ25
ロコモ25は整形外科の専門医でなくても採点結果からロコモティブシンドロームかどうかを発見することができる便利な判断チェックシートです。
具体的には、「背中・腰・お尻のどこかに痛みがありますか」「普段の生活で体を動かすのはどの程度つらいと感じますか」などの設問が全部で25個あります。
ロコモティブシンドロームを予防する体操
「ロコモーショントレーニング(通称=ロコトレ)」は、ロコモティブシンドロームを予防するために、日本整形外科学会が推奨している体操のことです。ロコトレは家でも簡単にできるので、定期的に行うことでロコモーションシンドロームの予防に効果があります。
ロコモティブシンドロームにはそれぞれレベルがあるので、トレーニングは無理をせず自分に合った負荷で行うことが大切です。ロコモーショントレーニングには「片足立ち」「スクワット」があるのでそれぞれの体操の仕方を見ていきましょう。
片足で立つ
片足で立つことでバランス感覚が身につきます。バランス力は歩行の際に転倒や怪我を防ぐのでロコモ予防に身に付けたいです。片足立ちのやり方は、姿勢をまっすぐにして床につかないように片足を上げるだけなのでとても簡単です。
一人ではなかなかできない場合は机に指、手をついてそれを支えにして行います。支えがなくても大丈夫という場合でも転倒する危険性があるので、必ずつかまるものを近くに用意して行ってください。左右1分間ずつ、毎日3回行いましょう。
スクワット
スクワットをすると下肢筋力がつきます。これも立ったり歩いたりするために重要な筋肉なので鍛えておきたい場所です。
1、まずは両足を肩幅より少し広めに開いて、両足のつま先を外側に30度に向けて立ちます。
2、お尻を後ろに引くように身体をしずめてスクワットをします。身体をしずめる時は膝が足先の人差し指の方向に向くことと、膝がつま先より前に出ないこと、の2点を意識しましょう。
スクワットがうまくできない場合は、椅子と机を使ってスクワットをします。椅子に腰をかけて机に手をついて立ったり座ったりの動作を繰り返し行います。机に手をかざさなくてもできる場合は机の上に手をかざして立ち座りをしましょう。
スクワットをしている時は息を止めないで呼吸をしながら行います。膝を90度以上曲げてスクワットをしてしまうと、腰への負担が大きいので90度以内に抑えてください。
スクワットをするときはなんとなくするのではなく、太ももの前や後ろの筋肉を使うので今筋肉が動いていることを確認してから深呼吸をするようなゆっくりとしたペースで5、6回繰り返します。これを毎日3回行いましょう。
毎日数回行う
ロコモティブシンドロームを予防する運動は、できるだけ毎日定期的に行うことで筋力やバランス力がついてきます。1、2回やっただけで後は体操をしていないと、筋肉はまだ落ちてきてしまうので毎日体操をして筋肉が体にしっかりつくようにした方が効果的です。
ロコモティブシンドロームを予防するための食事
ロコモティブシンドロームの予防には体操だけでなく、食生活にも気をつけることで体が変わってきます。健康な体と食事の関係、食事のポイントを紹介します。
5つの栄養素をバランスよく
「5大栄養素」は、炭水化物、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルの5つの栄養素のことです。この栄養素を1日の食事でバランスよく食べることがロコモティブシンドローム予防には重要です。
私たちが運動器の機能を保って健康に生きていくには5大栄養素は欠かせません。炭水化物は「主食」に多く含まれています。ご飯、パン、麺類、などです。
たんぱく質は「主菜(メインのおかず)」で、肉、魚、大豆製品、卵などです。ビタミンやミネラルは「副菜(付け合わせのおかず)」で、野菜、海藻などをとりましょう。
脂質は気をつけて摂ろうとしなくても主食や主菜に必要量含まれていることが多いので通常はバランスよく食べていれば摂取できるので問題ありません。
主食、主菜、副菜をバランスよく1日3回の食事で摂るようにしましょう。さらに乳製品、果物なども組み合わせてあげるとバランスがもっとよくなります。5大栄養素を簡単に摂れるおすすめの食事は和食なので、1日のうち1回は和食を取り入れるとバランス的に良いでしょう。
主食、主菜、副菜の3つの組み合わせを1食で揃えることができないときは他の2回の食事で補いましょう。それもなかなかできない場合は1週間で調整してみましょう。栄養をきちんと食事から摂ることで健康な体作りができます。
規則正しく適量の食生活
正しい食生活は運動器の健康を守る上で重要なポイントです。規則正しく、腹八分目の食生活を心がけましょう。食べ過ぎも食べなさすぎも健康にはよくありません。規則正しく食べるというのは、昔に比べて現代では難しくなりつつあります。
長時間労働で食事の時間を十分にとれない、24時間コンビニやスーパー、宅配ができたことでいつでも何かを食べることが可能になった、核家族が増えて毎日同じ時間に家族揃ってご飯を食べる家族が減った、など様々な理由から決まった時間に3食食べるということが意識しないと困難なのです。
ですが、規則正しく食べることは大切で夜遅くの食事は肥満になりやすいですし、食事を抜いてしまうと痩せてしまいます。
食べ過ぎると肥満体型になります。肥満になってしまうと体重が増えた分、膝や腰に大きな負担がかかってしまい、それが原因でロコモティブシンドロームになってしまう可能性があります。
痩せていれば大丈夫かと思うでしょうが、あまり食べないと体にとって必要な栄養も不足してしまいます。栄養が不足した状態が続くと骨の骨密度や筋肉量が減ります。
これが原因で運動器官に障害がでて、ロコモティブシンドロームに陥ってしまうこともあるので痩せすぎの人も気をつけなければいけません。
カルシウムで骨の強化
カルシウムは骨をつくる栄養素です。骨は常に生まれ変わっているので、生まれ変わる際には骨の材料であるカルシウムが必要です。毎日の食事から骨の素になるカルシウムを摂取してロコモティブシンドロームに負けない体作りをしましょう。
骨の生まれかわりのサイクルは、古くなった骨が壊されて、そこに新しい骨がつくられるという仕組みです。新しい骨がつくられるときに骨をつくるカルシウムが不足した状態では骨が作られず壊されたままのスカスカになります。
骨がスカスカの状態は骨粗しょう症といい、骨粗しょう症になると骨折しやすくなって、骨折も治りにくくなります。カルシウムは日本人が不足しがちな栄養素なので意識的に摂る必要があります。
骨粗しょう症にならない丈夫な骨を作るためには1日700~800mgのカルシウム摂取が目安です。牛乳、乳製品、大豆製品、小魚、海藻、緑黄色野菜、などにカルシウムが多く含まれているので毎日の食事で摂って骨を強化しましょう。
また、カルシウムをとっていても、リン、塩分、カフェイン、を大量に摂取してしまうとカルシウムの吸収を妨げるのでせっかくとったカルシウムが無駄になってしまいます。
リンは加工食品に使われている食品添加物に多く含まれているので、加工食品をよく食べる人は知らず知らずのうちにリンを大量摂取して、カルシウムの吸収を妨げてしまっているのです。
食塩、カフェインは、カルシウムを尿と一緒に排出する作用があります。骨を丈夫にするカルシウムを吸収させるためには、加工食品やコーヒー、しょっぱいものの食べ過ぎに注意してください。
タンパク質で筋肉をつける
筋肉量は40歳代から0.5〜1%ずつ減少します。運動で筋肉をつけたつもりでも、食事から栄養を摂らないと筋肉が体につかず痩せて筋肉が減ります。筋肉量を増やすためには、食事から特にタンパク質を摂る必要があります。
約20種類のアミノ酸でタンパク質は構成されていますが、そのうち9種類のアミノ酸は体内合成のできない必須アミノ酸なので、食事から摂る必要があります。タンパク質には動物性タンパク質と植物性タンパク質があります。
動物性タンパク質の方が植物性タンパク質の質より吸収効率が優れているので動物性タンパク質だけとればいいと考えるかもしれませんが、動物性と植物性では含まれている9種類の必須アミノ酸の種類と量が異なります。
ですから、動物性タンパク質だけを摂るのではなく、両方から肉、魚、卵、乳製品、大豆製品などをバランスよく組み合わせて摂るようにしてください。
また、タンパク質を摂るときに一緒にビタミンB6を摂るとタンパク質の分解・合成を促進してくれるので体内への吸収効率が上がるのでおすすめです。マグロの赤身、カツオ、バナナ、キウイ、赤ピーマンなどの食材にビタミンB6が多く含まれています。
ちなみに、定期的な運動習慣とタンパク質の栄養を摂ることで筋肉の減少を防ぐことができますが、タンパク質だけでなく、炭水化物や脂質もエネルギー源となるので必要です。
エネルギーが不足の状態だと、体はたんぱく質をエネルギーに変えてしまうので筋肉が減ってしまいます。タンパク質だけを摂ればいいわけではないので、バランスよくタンパク質を意識しながら食事して筋肉をつけましょう。